ウールサッキングについての基礎知識
ウールサッキングという言葉について、聞いたことがありますか。
ペットの問題行動の一つであり、時には命に関わることもあります。
ウールサッキングとは
動物の異常行動のうちの一つで、布を好んで、吸ったり噛んだりすることを指します。
不安障害の一つ、「常同障害」に分類されます。
元々は「羊毛を噛む」の意味ですが、布だけでなくビニールや段ボール、プラスチック製品でも同様の行動を起こすことがあります。
時には電気コードを噛んだり食べたりしてしまう子もいます。
多くの場合は、布やビニールを噛み、穴を開けてしまいますが、うっかり摂食してしまうこともあります。
特に注意すべきは摂食です。
布や段ボールなど消化しにくいものを接触することで、未消化のものが腸内に留まり、消化不良や腸閉塞の原因になります。
消化しづらいものを接触することで、腸の中でも原型を保ち、腸壁を傷つけてしまい、寿命を短くする原因になる場合もあります。
場合によっては開腹手術が必要になることもあります。
開腹手術にはリスクがあります。
前提として、ある程度の体の大きさや体力が必要ですし、元気な子でも術後に感染症にかかる可能性もあります。
飼い主からすると、手術前後の治療費に加え、術後の療養にも気を使うでしょう。多頭飼いしているお家では、他の猫との接触を控える配慮も出てくるかもしれません。
あら〜食べちゃった、では済まないのです。
ウールサッキングの原因と治療法
ウールサッキングの研究によると、その原因は、
・早い母猫離れ
・ストレス
・環境変化
・別の病気
・遺伝
など、様々な要因によって引き起こされているものと考えられています。
(詳しくは別記事で解説します)
このように原因が様々考えられるものであり、精神的なものも強く影響します。
また、ウールサッキングに限らずペットの問題行動研究は発展途上であり、未知な部分も多いです。
そのため、治療法は確立されておらず、現状はほぼ対処療法しかできません。
ただし、別の病気が根本原因である場合は、病気を治すことで改善することがわかっています。
ウールサッキングは消化器系の病気や、心の病気などによって引き起こされることが報告されています。この場合は、手術や治療薬投与による病気そのものの治療により、問題行動を起こす原因を改善することができるからです。
おうちの猫がウールサッキングしていたら
自分のおうちの猫がウールサッキングをしてしまっていたら、どうすればいいでしょうか。
順にご紹介します。
①ウールサッキングの対象物を取り除く
何よりもまず、ウールサッキングしている布や段ボールを取り除きます。
猫にもよりますが、お気に入りの素材があるようならば、似たような素材で出来た布や雑貨なども、出入りできる部屋には置かないようにしましょう。
噛んで離さないような子には、しつけも兼ねて霧吹きなどで嫌な思いをさせ、布を離してもらいます。
②様子を観察
対象物を取り除いたら、猫の様子をよく見ます。
誤飲をしていそうかどうか、具合が悪そうでないかをチェック。具合が悪そうな場合は早めに病院に連れて行きます。
誤飲は対象物に穴が空いていたり欠けている部分があるかどうかで確認できます。
猫は具合の悪さがわかりにくいのですが、呼吸が荒い・弱い、だるそう、おもちゃに反応しないなどの場合は体の不調を疑ってください。
猫の様子を観察している間に、病院に行ける準備をしておきます。
愛猫がウールサッカーの場合は特に、近くにかかりつけ医を作っておくとよいでしょう。
ウールサッキングは対象物を変えて繰り返すことがあるので、信頼できる相談先があると心強いです。
病院に行く前に「誤飲をしてしまったかもしれない」と事前に相談できると、家でできる処置を教えてくれることがあります。
そして、これは事前に行う準備ですが、ペット保険に入ってるか確認し、未加入の場合は早々に加入しましょう。
病院に行く場合も行かない場合も、うんちを確認します。
誤飲したものがうんちにも出てこない場合、最悪は手術です。
③対象物を取り除いても、ウールサッキングが治らない時は
対象物を取り除き、うんちも出て一安心。
と思いきや、別の対象物にウールサックを再開する子は珍しくありません。
繰り返す場合は根気強く、しつけや生活環境を変えることで、ウールサッキングをしにくい条件を整えていく必要があります。
私自身が検討・実行したものを書いておきます。
▼ウールサッキング対策
・叱らない(逆効果になるため)
・とにかく怪しい素材は押し入れに入れて触らせない
・自宅でできるしつけを調べる(ウールサッキングしだしたら嫌なことが起こるという記憶づけ)
・お留守番中はケージに入れる
・近くの行動診療科を調べる
行動診療科では、問題行動を改善するための診療を行なっています。
・認定医を訪ねる(日本獣医動物行動研究会)
問題行動を研究している方々が集まっている研究会の先生に相談することもできます。
・オンライン相談
ペット保険でオンライン相談をつけてるところがあります。
例えばこちらは、24時間相談できるサービスがついています。
・飼い主さん自身のストレス・不安の解消
一番大切なのは、ウールサッキングしてしまっている子とその子の飼い主さんです。
飼い主さん自身も、いつ再発してしまうのか、いつになったら改善されるのか、腸に詰まらせて愛猫が苦しまないか、心配や不安でストレスが溜まります。
それが続くと、イライラして猫に当たってしまったり、飼えないと絶望して捨ててしまったりということも、現実としてはあり得ます。
猫を叩く、無責任に捨てる、そんなことはやってはいけない。
そしてそれと同じくらい、実はとても見落とされがちですが、ウールサッカーに付き合う飼い主さんの精神状態も大切なのです。
最後に
ウールサッキングの恐ろしさ、なってしまった時の対処法など、ご紹介しました。
ウールサッキングはどの猫でもやってしまう可能性がある問題行動ですし、根本的な治療法が確立されていない厄介な問題です。
既に1.5万本もの研究論文が出るほど調査が進んでいますが、それでもわかっていないことの方が多いです。
とはいえ対処はできるので、ぜひ落ち込みすぎずに怖がりすぎずに、
研究の発達に期待しつつ、気をつけながら猫さんと過ごしていただければと思います。
かくいう私も、初めて迎え入れた猫がウールサッカーで、布団を食べてしまって大変でした。
今は少し改善しているので、今後別記事で紹介予定です。
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません