ウールサッキングの5大原因

ウールサッキングをしてしまう猫も、幸運にもせずに過ごせる猫もいます。
その違いを考えるにあたり、「なぜウールサッキングをしてしまうのか」について、既にわかっていること・研究中のことをまとめてみました。

ウールサッキングの原因と思われている要素

ウールサッキングは、
・早い母猫離れ
・ストレス
・環境変化
・別の病気
・遺伝
の要素が大きく関わっているという研究結果があります。
それぞれどのようなことなのか、どのように研究されたものなのか、少しだけ詳しくお話しします。

原因①早い母猫離れ

母離れの時期が早いとウールサッキングをしやすい、という研究は複数報告されており、現在では大きな原因の一つとして定着してきています。

一例として、2017年に発表されたフィンランドチームの研究を紹介します。
この研究チームは40品種・5700頭余りの家猫のデータを集め、問題行動とされる「攻撃性」「内気」「極度のグルーミング」「ウールサッキング」などの行動の有無と、親離れ時期との相関性を調査しました。

結果、大人(生後1年)になるまで親猫と生活していた猫に比べ、それより手前で親離れした猫は、ウールサッキングをする確率が高かったことが確認されました。
(ほかの問題行動を起こす確率も高かったのですが、ここでは割愛します)

Figure 2 b. Ahola et al. (2017) Early weaning increases aggression and stereotypic behaviour in cats. Scientific Reports 7: e10412.

ちなみにこの研究では、対象の猫(4900頭以上)のうち約32%が、生涯のうちに一回以上ウールサッキングをしたことが確認されています。
ウールサッキングがどれほど身近な現象であるかがわかりますね。
Reference:Ahola et al. 2017

原因②ストレス

ウールサッキングは常同障害の一つですが、常同障害とは「ストレスが溜まったり、どうしたらいいかわからない時に、全く関係のない行動をする」ことを指します。
ストレスや欲求不満の環境下に晒されていると、ウールサッキングが見られやすいです。

例えば飼育下では、猫への過剰な接触や、逆に猫に構わないことで運動不足もストレス源と言えます。
あるいは、退屈や環境からの刺激が極端に少ない状態も、ストレスを生みやすいです。


他にも様々なストレス源が考えられますが、次の「環境変化」もその一つです。

原因③環境変化

原因②に連動して、環境変化によるストレスも常同障害を引き起こすことがあります。
特に猫は環境の変化に敏感であり、引っ越しや移動、ペットホテルへ預けた時など、いつもと異なる行動をすることは有名です。

ちなみに我が家の猫は、キャットタワーを5mほど移動しただけで、驚いて吐いてしまったことがあります。

散歩が好きな猫さん、お出かけについていく猫さんもいるので、とても個体差があります。
飼い主さんは愛猫がどういう変化が苦手なのかを観察しておくとよいでしょう。

原因④別の病気

ウールサッキングに関連する病気として、「心の病気」と「体の病気」があります。

猫も人と同じく、うつ病にかかることがあります。
うつ病になるとさまざまな症状が出ますが、その中でウールサッキングを始めてしまうことがあります。
うつ病には治療薬が開発されており、うつ病が改善されることでウールサッキング自体しなくなる場合があります。

ウールサッキングに関連する体の病気としては、
・寄生虫
・猫白血病ウイルス
・猫エイズ
などにかかっていると、食べ物ではないものを食べてしまうことがあるようです。

原因⑤遺伝

ウールサッキング猫の研究の中で、ウールサッキングが確認されやすい猫の品種がわかってきました。
シャム猫やバーマンなど、東洋系の品種によく見られる傾向があります。
日本で見られる雑種も、比較的ウールサッキングしやすい傾向があると報告されています。

まとめ

猫のウールサッキングには、今まで育ってきた猫生、環境、病気や品種など、様々な要因が報告されています。
原因が複雑なだけに、根本治療が難しく、その猫の行動をよく観察しないと、原因も根本対処も難しいでしょう。
まずは猫との快適な生活のために、ストレスをなるべく無くしたり、気になる健康不安はすぐ病院に相談するといった、猫飼育における基本をおさえることが大切です。